クレジットカードの「仮売上(オーソリ)」の有効期限が、これまでの各社45〜90日程度から25日へ短縮されます。適用は2026年7月以降、契約している決済代行会社ごとに順次はじまります。影響が大きいのは、注文から商品の出荷・提供まで日数がかかるビジネス——予約販売・受注生産・入荷待ち販売・クラウドファンディング型の販売です。出荷のタイミングでオーソリが失効していると、売上が確定できず、取りはぐれが起きます。
この記事は、決済代行会社各社が公開しているルール変更の告知をもとに、EC事業部・経営者の視点で「業務にどう効いてくるか」を整理したものです。技術的な通知は経理や情報システムに届いていても、売る側の判断が必要な話が、事業部や経営に翻訳されて届いていない——そこを埋めるための解説です。
先に要点
- 仮売上(オーソリ)の有効期限が各社45〜90日程度→25日に短縮(旧期限は決済代行会社ごとに異なります。参考値)。
- 適用は2026年7月以降、決済代行会社ごとに順次。「いつ・何日で切り替わるか」は契約先によって違います。
- 海外で発行されたカードは、さらに短い「7日」に制限される案内も出ています(扱いは決済代行会社により異なります)。
- 影響が大きいのは注文から出荷まで25日を超えうる商材。出荷時にオーソリが失効していると売上を確定できません。
何が変わるのか
クレジットカード決済は、ふつう2段階で処理されます。
- オーソリ(仮売上・与信) — 「このカードで、この金額を使えるか」を確認して利用枠を仮に押さえる処理。
- キャプチャ(売上確定・実売上) — 実際に代金を確定させる処理。多くのECでは「商品を出荷したとき」に行います。
これまでは、オーソリを取ってからキャプチャするまでに、決済代行会社によって最長45〜90日程度の猶予がありました(参考値。旧期限の一例——SBペイメントサービス45〜90日/GMOペイメントゲートウェイ60日/ゼウス90日/DGFT60日)。これが Visa・Mastercard のルール変更により、一律25日へ短縮されます。オーソリを取ってから25日を過ぎると、その仮売上は無効になり、そのままでは売上を確定できなくなります。
決済代行会社によっては、25日を過ぎたオーソリを自動的にキャンセルする運用も告知されています(例:ペイジェントは2026年10月1日以降、オーソリ取得日を0日目として起算し、期限を過ぎた取引を自動キャンセルすると案内)。自動キャンセルの処理自体に手数料がかかる場合がある、という注記もあります。
海外発行カードは「7日」
国際カードブランドのルールでは、海外で発行されたカードのオーソリ期限は「7日以内」とされ、国内発行カード(25日)よりさらに短くなります。一方で、決済代行会社によっては「国内・海外を問わず25日で扱う」と案内している会社もあり、システム側でどう扱われるかは契約先ごとに異なります。越境ECや、海外からの注文が一定数あるサイトは、自社の決済代行会社の案内を必ず確認してください。
どんなビジネスが影響を受けるか
「注文と同時に決済確定・即出荷」のビジネスは、ほとんど影響を受けません。オーソリからキャプチャまでが数日で終わるからです。危ないのは、注文から出荷・提供までに時間が空くビジネスです。
| 類型 | なぜ危ないか |
|---|---|
| 予約販売・先行予約 | 発売日まで数週間〜数ヶ月。注文時のオーソリが出荷前に失効する |
| 受注生産・オーダーメイド | 制作に日数がかかり、完成・発送時にはオーソリが切れている |
| 入荷待ち・取り寄せ販売 | 在庫確保までのリードタイムが25日を超えるとアウト |
| クラウドファンディング型の販売 | 支援時に与信し、リターン発送は数ヶ月後——構造的に期限を超えやすい(プラットフォーム側の対応方針は各社の告知を確認) |
これらのビジネスでは、これまで「注文時にオーソリ→商品ができたらキャプチャ」で回っていた運用が、25日の壁で成り立たなくなります。出荷の時点でオーソリが失効していれば、代金を確定できず、顧客にもう一度カード情報を入れてもらうか、最悪の場合そのまま取りはぐれます。期限を過ぎたオーソリで無理にキャプチャしようとすると、「オーソリ未取得」を理由としたチャージバック(売上の取り消し)が成立するリスクも指摘されています。
実務でやるべきこと
1. キャプチャのタイミングを設計し直す
まず、自社の「注文→出荷(提供)」の平均日数と最長日数を洗い出してください。最長が25日を超える商材があれば、それが対象です。考え方は2つあります。
- 出荷を待たずに、早めにキャプチャする — ただし「商品未発送での売上確定」は特定商取引法・カード会社規約・返金運用の観点で注意が必要です。安易に前倒しせず、返品・キャンセル時の返金フローとセットで設計してください。
- オーソリを取り直す(再オーソリ) — 期限が近づいたら一度オーソリをキャンセルし、改めて取り直す運用。ただし再オーソリ時にカードの利用枠不足・カード変更・限度額超過でオーソリが通らないリスクがあり、その分だけ取りはぐれの可能性が残ります。
どちらを採るかは商材のリードタイムと単価によります。25日以内に必ず出荷できる商材は前者、それを超える商材は再オーソリ運用の設計が要ります。なお、カードの有効期限切れによる自然失効とも重なる領域なので、期限管理は合わせて見直すのが効率的です。
2. 再オーソリの運用と、決済代行会社の機能を確認する
再オーソリを自動化・省力化する機能は、決済代行会社ごとに整備状況が異なります。自社の契約先に、次を確認してください。
- 25日経過前に通知・アラートが出るか
- 再オーソリのAPI・管理画面機能があるか
- 期限超過時に「自動キャンセル」されるのか、こちらの操作を待つのか(自動キャンセルの手数料の有無も)
- 海外発行カードの判定結果を、注文データや管理画面で受け取れるか
本記事は特定の決済代行会社の乗り換えや、特定ツールの導入を推奨するものではありません。まず自社の契約先の告知を読むのが最初の一歩です。
3. 会計・締めの処理を見直す
オーソリとキャプチャのタイミングがずれると、「受注はしたが売上は未確定」の取引が増えます。月次の締め・売上計上のタイミング、未確定取引の管理方法を経理と共有しておいてください。特に決算をまたぐ予約商材は、計上時期の整理が要ります。
セルフチェックリスト
次のうち1つでも当てはまれば、25日ルールの対象です。自社の決済代行会社の告知を確認し、対応を始めてください。
- 注文から出荷・提供まで、25日を超えることがある商材を扱っている
- 予約販売・受注生産・入荷待ち・クラウドファンディング型の販売をしている
- 海外発行カードでの注文が一定数ある(越境EC・インバウンド)
- 「注文時にオーソリ→後日キャプチャ」の運用をしている
- 自社の決済代行会社から届いた「ブランドルール変更」の告知を、事業部・経営がまだ読んでいない
- 期限切れオーソリが「自動キャンセル」される契約かどうか、把握していない
- 再オーソリの運用・会計処理を決めていない
次の一歩
この変更は「知っていれば設計で防げるが、知らないと毎月じわじわ取りはぐれる」タイプの制度変更です。そして、これは今後1年に控える一連のカードルール変更の入口にすぎません。2026年9月30日には、「カードが使えるかを確認するだけ」の少額オーソリ(1円・100円などでの有効性確認)が禁止され、別の処理への移行が必要になります(少額オーソリ禁止(2026年9月30日)の解説で扱います)。
自社のオーソリ・キャプチャ運用が25日ルールに耐えられるかは、「注文から出荷までのリードタイム」「使っている決済代行会社の対応状況」「会計処理」の3点を棚卸しすれば見えてきます。個別の運用設計についてのご相談も承っています。
出典・確認日
本記事は、カードブランド(Visa/Mastercard)の規則条文そのものではなく、各決済代行会社が公開しているルール変更の告知をエビデンスとしています。すべて2026年7月13日確認。適用時期が「予定」の告知が多く、内容は変更される場合があります。必ず自社が契約している決済代行会社の最新の案内を確認してください。
- PAY.JP(株式会社PAY 公式お知らせ):海外発行カードのオーソリ期限を最大7日に制限(2026年8月開始予定)。国内発行カードは原則30日。期限超過は「オーソリ未取得」理由のチャージバックリスク。
- Bカート(株式会社Dai/ペイジェント公式案内資料を掲載):Visa・Mastercard のレギュレーション強化。オーソリ有効期限60日→25日。2026年10月1日以降、期限超過オーソリを自動キャンセル。
- ゼウス(決済代行会社 公式サポート):仮売上→売上可能期間 90日→25日。適用2026年9月頃。少額の仮売上禁止→0円与信への変更。
- カラーミーショップ(GMOペパボ 公式お知らせ):仮売上有効期限 最長90日→25日。適用2026年7月以降・決済代行サービスごとに順次。有効性確認目的の仮売上は2026年9月30日以降禁止。
- ecforce(株式会社SUPER STUDIO 公式サポート):与信期限が25日に変更。少額オーソリ禁止。適用日は各決済代行会社の案内を確認。
- Stripe 公式ドキュメント:日本アカウントの日本円取引は最長30日保留可(2026年7月13日時点で25日への変更記載なし)。